患者さんと歯医者の関係
「最近の歯医者さんは昔と変わりましたね.」という言葉を耳にします。山崎豊子氏原作の「白い巨塔」に登場する財前五郎のような、ちょっとコワイイメージの医療者は少し前のお話のようです。患者さんと歯医者の関係も数年前に比べると随分と変わってきているのかもしれません。
患者さんと私たち専門家の間には様々なギャップが存在します。歯に知識のギャップ。患者さんが思っている自分のお口と、私たちが考える現実とのギャップ。患者さんが最終的になりたいとイメージしていることと、私たちが考える理想とのギャップ…等々。
しかし、私たち専門家はそのギャップを認め、埋める努力は必要でしょう。
お口の健康、ひいては体全体の健康を考えた時には、健康になるための行動をおこす主人公はあくまで患者さん本人です。健康になるために、日常の行動を変えるのも患者さん本人です。
医療者ではありません。健康になるためのヒントを専門家が伝えて共に同じ目標に向かって、両者が手と手を取り合って歩んでいくのが理想ではないでしょうか。
患者さんと私たち専門家は基本的には対等であって共通の目標を持つべきだと思います。患者さんの希望と私たち専門家の理想像は同じでないことも多いですから、そのギャップを埋める、すり合わせも必要でしょう。 このように、これからの患者と歯医者(医療者)の関係はもっと変化していくでしょう。
…ちょっとややこしいでしょうか。
つまり患者さんと医療者とがコミュニケーションにより、お互い分かりあう努力をしながら健康を目指すというものです。
患者さん側にある「気づき」とはなんでしょうか。
これはまさに患者さん自身がご自分の将来の健康に対して
「気づく」ことなのです。患者さん自らが主体的にご自分の健康について考え、治療の先にある「幸せな時間」について考えるようになることなのです。
医師側にある「傾聴」とはなんでしょうか。それは患者さんと向き合い、患者さんの訴え、要望を文字通り耳を傾けて「聴く」ことを指します。
患者さんと私たちが同じ立場である以上、患者さんご自身にも健康についてもっと関心をもってもらえたら、と思います。
「先生にお任せします」がすべて良い結果を生むわけではありません。
なぜかというと、そこには「された」「やられた」という受け身の意味合いがずっと付きまとうからです。歯科で言う「削られた」「抜かれた」などです。勿論、医療者側にも反省すべきところがあることも多くあります。歯は持って生まれた宝です。一度無くなったら二度と戻りません。
最近、患者さんのお話を聴くことに重点を置くようになって、患者さんとの距離がグッと近くなった気がします。患者さんとの関わり方も考え方も私自身以前と変わってきています。
今良ければそれでいいでしょうか?10年後、20年後あなたはどんな風に過ごしていたいですか?一緒に考えてみませんか?80歳になっても大きくお口を開けて笑い、好きなものをおいしく食べている自分自身を想像してみてください。素敵ですよね。そんなあなたは、今のあなたの意識ひとつで現実のことになります。
悪くなった「歯」を治すことだけでではなく、「困りごとのない楽しい人生」を目標にしてみませんか。「痛くなってから」「悪くなってから」行く歯科医院ではなく「困りごとが起こる」前に、歯科医院に足を運んでみませんか。そう、「予防」のために歯医者さんに行く。
それがきっと、QOL(Quality of Life /生活の質)の向上につながり、楽しい人生が送れるでしょう。
予防のすすめ
こんなお話をよく聞きます。最近、歯がしみる、歯が痛い。
・歯医者に行ってみたら虫歯が深くて、歯の神経を取らなければならなかった。
・歯がぐらぐらする気がして、口臭も指摘された。
・調べてもらったら歯周病の診断を受け、しかも病状もかなり進行していて抜歯となってしまった…。
抜かなければならなかった歯一本…実は歯一本で済むお話ではありません。 お口の中はバランスで成り立っています。
歯一本一本と様々な組織が集まって一口腔(いちこうくう)という集合体を作っています。
そのバランスが崩れると健康な歯にも歪が及びます。
そのまま放置すると口腔内の崩壊が進んでいきます。
歯の病気に限ったことではありませんが、病は早期発見、早期治療が良いのはどなたでも分かっていることですよね。もっと良いのは病がない状態が長く続くことですよね。
人生の大半を歯のことなど考えずに楽しく過ごすために、一年に数回、ほんの少しだけ歯のことを気に掛けてみてはいかがでしょう。それがきっと「困りごとのない楽しい人生」につながると思います。