こんにちは、歯科衛生士の佐藤です。
みなさん、普段お口を閉じている時に「上下の歯と歯の間に隙間」は空いていますか?通常、歯は会話や食事の時以外には接触せず、2~3mmの隙間がある状態が理想です。
TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)は、上下の歯が無意識に接触し続ける習慣を指します。しかし、TCHをもつ人は日常生活でストレスを感じたときや集中しているときなど、気づかないうちに歯を噛み合わせてしまうことがあります。
TCHが原因で引き起こされる症状
1. 顎関節症
顎関節や咀嚼筋に過度な負担がかかり、顎関節症を引き起こすことがあります。これには、顎の痛み、開閉口時のクリック音(「カクッ」や「ガクッ」といった音)、開口制限などが含まれます。
2. 歯の摩耗
歯が常に軽く接触していることで、歯のエナメル質がすり減り、知覚過敏や歯の摩耗が進行します。
3. 歯の痛み
歯の神経や歯根膜(歯と根を支える骨の間にある薄い膜)に負担がかかり、歯の痛みや違和感を感じることがあります。
4. 頭痛や肩こり
顎の筋肉に力が入り続けることで筋肉が疲労し、頭痛や肩こり、首の痛みを引き起こすことがあります。
5. 咬合の不調
歯が長期間接触し続けることで、咬合が不安定になり、歯並びや咬み合わせが悪くなる可能性があります。
TCHの原因
ストレス: 精神的なストレスや緊張状態が原因で、歯を無意識に噛み合わせることが多く見られます。
姿勢の悪さ: 悪い姿勢も、顎に不自然な力をかけ、TCHを引き起こす要因になります。
集中力の維持: デスクワークや集中を要する作業をしているときに、無意識に歯を接触させる癖がつくことがあります。
TCHの治療・対策方法
TCHの治療や対策には歯科医師の指導が非常に重要です。
主な治療法には以下の方法があります。
1. 習慣の改善
自身のTCHに気づくことが重要です。自己認識を高めるためにリマインダーやメモを利用して、意識的に上下の歯を離すことを促し、「歯はリラックス時に上下が離れているのが普通」という基本を再認識させます。
2. ストレス管理
ストレスは筋肉の緊張をまねき、TCHや歯ぎしり・食いしばりにつながります。運動や瞑想、深呼吸などストレスを軽減させる習慣を身につけることが大切です。
3. マウスピース(ナイトガード)
夜間にTCHが強く表れる場合、歯を保護するためにマウスピース(ナイトガード)を装着して歯や顎にかかる負担を軽減し、歯の摩耗を防ぎます。
4. 姿勢の改善
デスクワーク時の姿勢を改善したり、背中や首、肩のストレッチを行うことが推奨されます。
5. 咬合治療
咬合(こうごう)は、上の歯と下の歯がどのように噛み合っているかを指します。咬合に問題がある場合、上下の歯の接触が過度に発生しないように歯科医師が咬合調整を行うことがあります。
まずはご自分にTCHがあるかを確認する
TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)は無意識の習慣ですので、直すのは難しいものです。まずはご自分にTCHがあるのを認識することが第一歩となります。上下の歯が当たっていることに気づいたら、意識的に離すようにしましょう。長期間続くと、歯や顎に深刻な問題を引き起こす可能性があります。早期に歯科医師に相談し、適切な対策を取りましょう。